警察一家の娘恋した相手はヤクザの息子でした



複雑な気持ちを抱えながら、静かに大和さんと会話。


途中玄関のドアが開く音がして、閉まったかと思えばすごい勢いで誰かが階段を駆け上がってきた。



「わ、若!!いやもうほんま!あの人怖い!!」


2人で身構えたけれど、それは銀次さんでお互い顔を見合わせて微笑む。


私はお姉さんでも良かったのだけど。少しどんな人か気になっていたし。



「あいつ帰ったのか?」


「いや、急に仕事入ったみたいで行きましたわ。チビ子のこと根掘り葉掘り聞いてくるし、誤魔化そうとしたら睨まれるし、だいぶ話しました。すみません…………」


「あ、わ、私は全然大丈夫です……」


お姉さんはどうして私のことを気にしてくれてるんだろう。そこはわからないけれど、大和さんの顔が歪んでる。



「……姉貴……余計なことしなけりゃ良いけどな。」


「…いや、その、チビ子。もし姐さんに会うたらうまく相手してくれっ!」


「え、あ、は、はい。」


一体どうしたんだろう……だけどこうも2人を振り回すすごい女性だということはわかった。



「いやもうしゃーないし亜紀のこと話そうと思ったら、それは興味ないって言われてしまいましたわ。ほんま自由なお人やで」


「お、お疲れ様です…」


「チビ子ケーキ持ってくるな。やっと亜紀のことを」


銀次さんがニヤッと笑ったところで、大和さんが時計を確認しながら立ち上がる



「……もうこんな時間だな……送ってってやる。ケーキは土産に持って帰れば良いから」



あ、ほんとだ……もうこんな時間


時計は5時を指していて、私は銀次さんにごめんなさいと頭を下げた。



「ま、また今度お話ししますね」


「え、う、うそやろ!?うそや!!」


「…うるせぇ。銀次。」


「若!俺、姐さんに無茶苦茶されただけやん!!」


銀次さん……本当に悲しそうな顔してる
亜紀ちゃんからOKがでたらいくらでも話してあげるのに。


大和さんに手を貸してもらい立ち上がると、彼は部屋の扉まで開けてくれた。まだブツブツ何か言ってる銀次さんを置いたまま私達は下に降りる。


「あの、私自分で帰れますよ」


「…いや、駅くらいまで送ってやる。」



気を使わせたくないという気持ちと、まだ一緒にいたいという気持ちが交差して


「で、でも…」

「…ほら行くぞ」


結局、図々しい気持ちが勝ってしまった。

するとそこに慌てた様子の銀次さんがやってくる。




「…え、ま、まって!俺車だしましょか?歩きでしょ?」


「……いらねぇよ。歩く」

「で、でも、」


「お前は来んな」


ぴしゃりと言い放たれて


はい

と小さくなった彼を少し可哀想だと思ってしまった。


…よっぽど亜紀ちゃんのこと好きなんだなぁ……


あんな風にはっきりと態度に出せるのが羨ましいなんて、そんなこと思っちゃダメだよね。