学校から割と離れた所に連れてきてもらっていたようで、亜紀ちゃんと道を調べながらテクテクと歩く。


「……あ、次右だって。」

「はいはい。了解」


一応駅近くに出るまでと、スマホのアプリでナビをしていたらいきなり画面が変わりそれが音を立てて震える。


表示された名前を見て、思わず身体が固まった。



……大和……さん?



「え、あ、あ、亜紀ちゃん!!」


「電話だね……」


興奮する私に、落ち着いてる亜紀ちゃん。


まさかこのタイミングでかかってくるとは思ってもないよ。




ゆっくり指をスライドさせて


「もしもし……」


と呟けば間違いなく彼の声が耳元で響いた。




『よぉ…真子』


「よ、よぉです……大和さん」



どうしよう。
さっきの銀次さんの言葉を思い出してか、いろいろ複雑な感情が渦巻いていて、嬉しいという気持ちと混じっていく



『……家に帰ったら銀次がいねぇんだよ。昨日、お前に何か言ってやるとかブツブツ言ってたから気になってな……あいつそっち行ってないよな……?』



言っていいのか。
それともいけないのか。
わからなくなって私は口ごもった。



するとすかさず大和さんが


『お前……なんかあったろ』


と鋭いところを突いてくる。



「え、と、特にありません」


『嘘つけ』


「う、嘘なんかじゃ…」


『……いつもの馬鹿みたいに明るい声じゃねぇ。無理すんな……何があったか言え。聞いてやるから』



まだあって数回だと言うのに。
声だけで私の感情を読み取ってくれたことに、思わず言葉を失った。



胸が苦しい……
銀次さんの言葉が、驚く頭の中で響いてるせいかな。



『お前は若の将来に邪魔や』


わかってる。
私が諦めればいいことも、秘密を知られればもっと邪魔になるということも。



グッと涙がこみ上げるとそれに気付いた亜紀ちゃんが、私の背中を優しく撫でる。



『真子……?』


名前を呼ばれた瞬間
張り詰めていた糸が、切れた気がした。



「……大和さ…っ…正直にっ…言ってください……っ。私……め、迷惑ですかっ?? 邪魔ですか……っ??」


いっそ本人から言われたら身が引けるのに。
そう思った自分がいる。


ポロポロと涙を流したことをこれ以上知られないように、黙り込んだ。



なんて卑怯者なんだろう。
彼に嫌われることが怖くて、警察の娘だと言えないなんて



『……銀次のやつが…やっぱり何か言ったんだな…』


「あ、その…」


『……邪魔だったらすぐに言ってる……迷惑なら気にかけたりしねぇよ』


そんな言葉に、またポロポロと涙がこぼれ落ちた。