携帯を握りしめながら、頭がまた大和さんのことを考え始める。彼は甘いもの好きなのかな。
じゃなきゃクレープなんて一緒に食べるのは無理かも。
「クレープ好きか聞いてみてもいいかな?」
「や、やめなさい!コンクリートで固められて東京湾に沈められるわよ!!」
亜紀ちゃんのヤクザのイメージが激しすぎて、私はついつい苦笑い。
「ならアイスクリームはどうでしょうか…」
「どうしてそんな不似合いなものばかり口に出すのよ!!」
「だって、せっかくなら一緒に好きなもの食べたいし、同じならいいかなって。」
えへへと笑うと、彼女は あー!っと顔を両手で覆った。
「なんなの!可愛い!!!私が食べてあげるわよ!!わざわざ聞かなくても!!」
「それは、勿論楽しいし嬉しいけど、何か違う気が……」
1人で悶え出した亜紀ちゃんを見て、私は携帯のRAINを開く。大和さんの名前をタッチすれば、まだまっさらなトーク画面が目に映った。
「…ま、真子…送っちゃうの?」
私の様子に気がついた彼女はゴクリと息を飲む。
「クレープが好きがどうか聞いて、嫌いなら私が彼の好きなものを好きになる!」
「なんて健気な……」
昨日はありがとうございますと送った後、クレープが好きかどうかを聞いてみた。
イチゴと生クリームのやつが一番好きだけど、ぜひ大和さんにも食べて欲しい。
5分ほど経つと、相手も休み時間中なのか返事が。
別に好きじゃないけど、真子が食いたいなら行くか?銀次から逃げるのに丁度いいし。
……え
何度も何度も文章を読み返す。
待って…まだステップ踏んでないのに!クレープを食べに誘われた!?
「え、あ、わ、え!?」
アワアワしながら慌てて返事を打つ。
も、もうクレープを食べに行ってくれるんですか?!?
「どうしたの?真子」
「く、クレープ食べに行ってもいいって……さ
、誘われた…」
「え、嘘でしょ?」
また既読がついて、すぐにメッセ
打つの面倒だから、電話してもいいか?
そしてまたしても読んだ文章に、時間が止まったのかと思った。
電話……してもいいか?
え、今??
「う、え、で、電話…ど、どうしよう!」
「な、なによ。落ち着いて。真子」
一応大丈夫です
とか送ったけれど、全然大丈夫じゃない。
しかも心の準備がままならぬまま
電話がかかってきた。

