あまりの嬉しさに携帯を握りしめたままぼーっとしていると
「そろそろ帰るか」
と大和さんが言ったことで現実に戻ってきた。
「あ、引き止めてしまって申し訳ありません」
「ほんまやで!お前のせいで、早く若を連れて帰るっていう目標が崩れたわ!!」
「目の前に立つな。邪魔だ銀次」
グイッと彼を退けて大和さんがじっと私の顔を見つめる。
「あの…嬉しいです。本当に。ありがとうございます」
「……なんなら乗ってくか?車」
へっ!?
と驚いたのは私だけでなく銀次さんも。
「わ、若!運転手俺!!絶対いやや!乗せへんで!!」
今日、このほんの少しの時間ですっかり銀次さんに嫌われてしまった。まぁ仕方ないか……
「あの…私、今日は胸がいっぱいなので、歩いてか、帰ります。」
「本当に変な奴だな。お前」
大和さんはおかしそうに笑うと、私に威嚇する銀次さんに車を開けてもらい乗り込んだ。
「また連絡する」
「あ、は、はい!!」
「ちゃんと返事しろよ」
クスッと笑ってそういった彼に、コクコクと激しいくらいに頷く。
返事しないわけがない。
絶対すぐに既読つけて、すぐに返信しちゃうよ
銀次さんが
これ以上話させるか!
という勢いでドアを閉めたせいで、大和さんの顔があまり見えなくなった。
「俺は認めへんぞ。このクソチビ。覚えとけよって
あかん!お前、若しか見てへんやろ!!?」
何も耳に入らない
何も見えない。
ただ思うのは貴方の事だけ。
私…やっぱり
大和さんのことが好きだ。
それがたとえ、どんなに困難で
どんなにいけないことでも。
動き出した恋は、止まり方を知らなかった。

