覚悟を決めて目を閉じたのに、ムニュと両頬を片手で掴まれる。


「…っ!」


「…プッ…間抜けな顔」


「は、はなひてくだはい」


私にしてはかなり決断して目を閉じたのに、大和さんはどうやらからかっているだけだったらしい。


うう…あの優しいイメージと違う。
で、でも…とても楽しそうな顔に胸がドキドキするから、違ってもいいや。


もう惚れた弱みというのを体感している私は、解放された頬をスリスリと撫でた。



「お前、バカだな」


「え、た、確かに頭は悪いですっ」


「そういう意味じゃねぇよ」



……彼を避けてるみんなは知らないのかな


こんなによく笑う人だって。


とっても素敵なのに、勿体無い。



「え、も、もうキス終わったんですか!?俺なんも見てへんで!いま目隠ししてるから!」


「お前何期待してんだよ。」



「若のキスなんて期待するわけないでしょ!お、おわったらいうてください!!」



銀次さんは目を両手で覆って、そんなことを話してる。



「真子」


「あ、は、はい」


「……連絡先教えてやる。お前も教えろ」


また名前を呼ばれたと喜んでいるところに、更に喜ぶ出来事。



いま…連絡先聞かれたよね。
え、夢じゃないよね!?



「ふ、フルフルするんですか!?」


「…べつにそれでもいいけど。ほら」


ドキドキドキドキと壊れちゃうんじゃないかと思うくらいうるさい心臓。


2人で携帯を揺らすとお互いの連絡先が出てきた。



「……お前、なんでそんなに真っ赤なんだ?」


大和さんを追加したのと同じくらいにそんな指摘を受ける。


「う、嬉しいからです…」


「なんだそれ。変な奴だな」


またクスッと笑った彼に、顔が熱くなりすぎて爆発しそうだ。今日だけで何回笑ってくれるの?幸せすぎて、どうしていいかわからないよぉ。



「ちょっ、いつまでやって、、、ってあ!?なんで連絡先交換しとんねん!」



やっと目隠しをやめた銀次さんは、あんぐりと口を開けて怪訝な顔をしている。そして私をギロリと睨んできた。



「うるせぇ。銀」


「反対!反対反対!こんな女と友達なんて、組長が許すわけないっ!!」


「…親父は関係ないだろ。黙ってろ」



ポーッともう意識が飛んでいく。
いまは大和さんのことばかり考えてしまって、銀次さんの小言も耳に入らないよ。




「真子。」


「は、は、はい!!」


「…お前…無防備だから気をつけろ……無防備になるのは俺の前だけだ。わかったな」


「む、無防備…り、了解しました!」



何が無防備なのか全くわからないけど、とりあず約束。そんな私達に銀次さんが



「どこのカップルやねんっ!!会話がおかしいやろっ!!」



とひたすら突っ込んでいた。




だめだ…私の目は今、大和さんしか写ってない。