「……まだ何かあるのか?」
静かに響いた声にゴクリと息を飲む。
「私平気です…」
「は?」
「貴方がヤクザさんの息子さんだと知った上で仲良くなりたいと思ってやってきました!!」
カッと見開いた彼の目。
私は一瞬それに怯んだけど、それでもグッと堪えて真っ直ぐ彼を見据える。
「……嘘やろ……ヤクザの息子やと分かった上で来たんかいな…」
正直このお兄さんは
若、若、と連呼していたのに何を言ってるんだろう。だけど、いまはそんなことはいいか。
「……ここ日本で地球です。住む世界なら同じです……1人になろうとするのはどうしてですか??」
「……なっ…」
何十センチも高い身長。
ずっと見上げていると首が痛い。
だけどそらすわけにも行かなくて、ジッと見つめ続けた。
「……も、もし、私自身が嫌なら諦めますけど、そういうわけじゃないならお友達になってください……」
もう後は、推すのみと続けてお願い。
横でお兄さんがアワアワとしている。
「…俺が怖くないのか?」
すると、彼が口を開いて私にそんなことを聞いてきた。
怖い……?
確かに金色のメッシュを入れてるし、ヤンキーなのかなって思ったけど……初めて会った時からこの人は優しかった。
…ヤクザの息子さんだってわかった時も、それでも仲良くなりたいと思ったし。そりゃ隣にいるお兄さんは少し怖いけど、彼自身は何も怖くない。
「怖くないです……だっていつでもピンチに駆けつけてくれる優しいヒーローみたいだなって思ったので!」
ニコッと笑ったら、目を丸くした後
ゆっくりと彼は口端をあげる。
「……ああ……あかん。あかんで!若!!流されたらあかん!!」
「うるせぇ。お前は黙ってろ銀次」
「いや、黙らん!そんなええおもちゃ見つけましたー!みたいな顔して!!こんな締まりのないチビと仲良くお友達ごっこなんてした日には、どれだけ威厳がなくなるか!!」
隣でギャーギャー騒ぐお兄さん改め銀次さんの言葉を、彼はあっさりと無視して私と目をしっかりあわせてきた。
「お前……名前は?」
「え、あ、笹本真子です。」
「俺は、天龍大和(テンリュウヤマト)。いいぞ。友達になっても。」
え……と言われた言葉に時間が止まる。
なってもいい?
私と友達に??
嘘?ほんと?
混乱してしまって、どう喜びを表せばいいのかわからない。
「わ、わ、わかぁあああ!」
銀次さんは、発狂してるし。
「ほ、ほんとに友達になってくれるんですか?」
「別に減るもんじゃないしな。それに、お前なんかほっとけないし、後暇つぶしに楽しめそうだし。」
…ひ、暇つぶし??
それは一緒に出かけたり、映画見に行ったりできるということかな?
大和さんの言ったことを理解しようと頭を悩ませていたら
「で」
と彼は悪い顔で笑った。
「キスは、してくれるんだよな」
「……え……」
その交換条件は、必須なの?

