いまだに1人でワーワーと興奮しているお兄さんのせいで、私はこの学校の生徒からジロジロと見られていた。
「あ、あの…静かに」
「こんな小さい子使うなんて卑怯者め!!でてこい!どこのやつらや!」
話聞いてくれないよ……ど、どうしよう。
オロオロとこの状況に困っていると
「何してやがる……銀。」
と低い声が響いた。
一気に跳ねる私の心臓。
まさか…こんなにいきなり現れるなんて……
恐る恐る後ろを見るとやっぱりあの人。
「あ、わ、若!助けて!こいつ、俺のこと殺そうとしてて」
「し、してません!」
被害妄想が激しすぎるお兄さんに、私は慌てて首を振る。そんな怖いことするわけないよ…っ!!警察官の娘なのにそれこそ危なすぎる!
ゆっくりと私を見た優しい彼は、驚いたように目を丸くした。
「…お前…あのどんくさい女」
「あ、は、はいっ。そ、そうです。」
覚えててくれた
嬉しい気持ちがふつふつ湧いてきて、顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「え、若の知り合いですか?」
「知り合い……といえば知り合いになるのか?わかんねぇ…」
お兄さんの質問に気だるそうに答えた彼に向かって私はペコっと頭を下げた。
「ふ、再びお礼をしにきました!本当に何度もありがとうございます!!」
いきなり本題から入ってしまえば気持ち悪がられると思ったので、まずはお礼を1つ。
彼は ああ と素っ気なくいうと真面目な顔で私を見ていた。
見られてる……恥ずかしい……
ドキドキと早い心臓が彼に聞こえないか心配だ。
「そんなことを言うためだけにわざわざ会いに来たのか??」
「え、あ、その……」
一瞬言うことを躊躇ってしまった。そのせいですかさずお兄さんが会話に入ってくる
「若、このチビちゃん俺にいちゃもんつけてくるんですよ」
「ち、チビちゃんって」
私はこの人がきっと苦手だ。
佐山くんより厄介そうだもん
「どうせお前が余計なことしたんだろ。わざわざ会話に寄ってくんじゃねぇよ」
「つ、冷た…若冷たすぎるわ!!」
またしても1人で大袈裟にアクションを起こしているお兄さんを無視して、再び彼は私に話しかけた。
「…お前それだけのために来たなら律儀すぎる。そんなんで大丈夫なのか?いつか騙されるぞ」
「いえ、あの…」
言わなきゃ……率直に。
せっかく与えてもらったチャンスなんだから。
「わ、私は…」
「ん?」
「あ、貴方とお友達になりたくて!!」

