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「じゃあ…気をつけてね。真子」
「うん。亜紀ちゃんも頑張ってね!!」
1日の授業が終わり2人でさっさと校門へ。
何か用事がない限りはいつも一緒に帰るけれど、今日はここでお別れだ。
「……道に迷っちゃダメよ」
「大丈夫だよ!!ありがとう」
バイバイと大きく手を振ると、名残惜しそうに彼女を手を振り返す。
いつものように亜紀ちゃんは、私の背中が見えなくなるまでお見送りしてくれた。
……緊張してきたなぁ…
何度も偶然と奇跡が起こったけど、今日も会えるかな………
無視されちゃったら?
帰っちゃってたら?
そんな不安ばかりが募っていく。
だけど私の足は、ひたすら前を歩いていて気がついたら彼の学校の校舎が見えてきた。
……緊張する……
校門に行こうと曲がり角を曲がると、一番に大きな黒塗りのベンツ。
「……あれって……」
案の定、中から出てきたのはオールバックのスーツのお兄さん。この前、あの人を
「若!」
と呼んでいた人だ。
「よし…。俺は今日こそ若を逃さへん。迎えに来るなと言われても、やっぱり若が電車に乗るなんて威厳が無さすぎや!」
1人で大きな声でペラペラ喋っているお兄さんを、私はつい遠目から見つめていた。
「おいっ!ジロジロみんな!いてまうぞ!!」
「ひっ…」
独り言が大きい上、でてくる生徒に喧嘩を売るなんて、迷惑するのはあの優しい彼じゃないだろうか。
あんな風に理不尽に叫ばれたら誰でも怖いよ……
「ったく。物珍しそうにみよってからに。」
お兄さんは胸ポケットに手を突っ込むと、タバコの箱を取り出して一本口にくわえた。この辺りは、喫煙禁止地区なのに。どうやら見えてないよう。
「はぁ…タバコも最後の一本か。最悪やな」
さらにはくしゃっと箱を潰すと、そこらへんにポイッと捨てる。勿論ここにゴミ箱なんてない。
よせば良いのにこれは性格。
私の真面目スイッチがパチッと押されてしまった。
「あの!」
「ぁあ?」
勢い良く声をかけると鋭い眼光で、睨みつけらる。
……すごい威圧感……だけど声をかけちゃったからには、なんでもありません。なんて言えないよ。
私は彼がポイ捨てしたタバコの箱を拾うと、ずいっとそれを差し出した。
「お、落ちました!!」
話しかけているというのにライターで火がつくタバコ。
鋭く睨んだまま煙を吐いた彼は、私を鼻で笑った。
「お嬢ちゃん…目ついてるか?落としたんちゃう。捨てたんや……」
「なら、尚更いけません。ポイ捨ては良くないし、ここは喫煙禁止地区です。」
「はぁ??」
負けるもんかと噛みついたけど、顔が怖い……
だけど、ダメなことはダメだって子供の時に教えられたもん。
「道路はゴミ箱じゃありませんよ!それにルールは守ってください!!」
キッと自分の中で必死に怖い顔を作ると、タバコを赤く光らせた彼はそのまま口から煙を吐き出し、私の顔にかけてくる。
「ご、ごほっ…ごほっ!な、何するんですか!?」
「お嬢ちゃんな…正義感強いのはええことやけど、うまいこと使い分けな痛い目見るで。」
「お、脅したって無駄です!いけないことはいけないんですっ!!」
煙が目に入ったせいでほんのり涙が浮かぶ。
この人の身長が高いから思い切り見上げると、流れることなく目尻に溜まった。それを見た彼は目を見開く
「な、なんや、そのチワワみたいな目!!俺はな、ちっこい動物に弱いねん!!やめろ!」
「わ、私は人間です!」
「あ、あかん。そんな顔で見てくんな言うてるやろ!!なんやお前!!どっかの組の回しもんか!!そうやって油断させて、誰かどっかから襲ってくるんやろ!?」
「な、何言って…」
「やめてくれぇえええ!俺は、若が跡を継ぐまでしぶとく生きるんやっ!!」
彼の中で物語が勝手に進んでいた。
私こんなに1人で喋る人……初めて見た……

