警察一家の娘恋した相手はヤクザの息子でした



「う、嘘だ。真子がそこまで行動力を見せるなんて!!いやよ…私の真子はトロくてちょっと頭のネジが抜けてるの!!もしかして…偽物!?」


「…亜紀ちゃん何気にひどいよ……それに私はこの前の亜紀ちゃんを見習おうと思って」


「そんなとこ見習わないでぇえええ!!」



私の肩を掴んでブンブンと揺らす亜紀ちゃんは、興奮したように叫んでた。



「あ、亜紀ちゃ……」


「…うう。真子って…恋したら一直線タイプなのね……私今日バイトだからついて行けない…」


「大丈夫。1人でなんとかするから」


ニコッと微笑むと少しだけ切なげな顔をした彼女は、はぁと大きくため息。



「……一生懸命な真子は真子だもんね……私が世話を焼きすぎてるのよね。お節介だし」


「そんなことないよ。いつも亜紀ちゃんのおかげで助かってるもん」



亜紀ちゃんが心配してくれてる理由は、はっきりとしている。そりゃ私だって、彼女がいきなりヤクザの息子さんに会いに行くなんて言ったら、心配しただろう。


亜紀ちゃん自身は彼に会ったことがないもの。


でもそんな心配を押し切ってでもあの人に会いたい。


仲良く……なりたい。



「何かあったら連絡してね。」


「うん!もちろん!」


2人でそんな会話をすると、学校のチャイムが鳴り響いてみんながダラダラと席に着き始めた。


それは佐山くんも同じで、私と目があうと何故だか べー と舌を出してくる。



……やっぱり昨日、話を遮ったこと怒ってるのかな。



すぐに目を逸らした佐山くんの背中を追いながら、そんなことを思った。



先生がやってきていつもと変わらない授業。



1つだけ違うのは、私がソワソワしているということだけ。



いきなり会いに行って、お友達になりたいです!


なんて言ったら気持ち悪がられるかな。



だけど、それは遠回しに言ったって同じか。



いつも以上に授業に身が入らなくて、ノートはほとんど白。


そして心の準備がままならないまま、時計の針はチクタクと進んだのであった。