結局、会えてしまったことに本来の目的を忘れて、身体の熱を冷ますためにポーッとしながらまた電車に乗り家に帰った。
「あれー?真子?どこいってたの??」
お母さんに声をかけられたけど、答える余裕すらなくてドサッベッドに倒れ込む。
……なんていう名前なんだろう
天龍組って書いてあったから、それが名字なのかな……
もっとお話ししたい。できれば仲良くなりたい
お友達になるくらいならいいんじゃないだろうか。
お兄ちゃんの財布は無造作に私の机に置かれ、私の記憶から抹消される。
撫でてくれた手……一瞬だけど大きかったなぁ……それに、やっぱり優しい人だ。
諦めようと思っていた気持ちが、どんどんどんどん膨らんでいく。
この日は胸がいっぱいでご飯を食べられなくて、挙句お風呂でのぼせて大変だった。
眠りについたのも珍しく12時を回ってからで、夢の中でも彼のことを考える。
私の頭の中は、驚くほどそればかりだった。
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翌朝
「真子っっっ!!!!」
バンッと開いたドアで目覚ましより早く飛び起きる。
まだ夢の中にいるのかと疑ったけれど、どうやら現実だ。お兄ちゃんが真面目な顔で、私の前に立っている。
お兄ちゃん…が…
ん?お兄ちゃん?
ハッと机に置かれた財布を見て青ざめた。
…すっかりといっていいほど忘れてた……
「お、お、お兄ちゃん。ごごごごめんね…」
とりあえず謝らなきゃと謝罪。
「どうしてもお金がないと不便だったから、おふくろに連絡したよ…」
「あ、お、お母さん…連絡取れたんだね」
「真子に何回かけても出ないからな……」
「で、でも、無事にお金は持って行ってもらえてよかった。」
あは。っと笑うとお兄ちゃんは
「良くない!」
と叫んだ。
「この歳になって、まさか母親にお金を持ってきてもらうなんて恥ずかしいったら…。先輩に借りることもできないし。せめて、せめて真子ならとお願いしたのに!」
「ご、ごめんなさい。これ財布です…」
今渡したって無駄なことはわかっていたけれど、机の上の兄の財布を手に取り頭を下げながら渡す。
「……何かあったのか?」
それを受け取りながら心配そうにつぶやいたお兄ちゃんの言葉に、私の心臓は大きく跳ねた。

