学校から家について玄関に置いてある財布を手に取る。
学校の荷物だけを置いて、そのまま着替えもせずに駅に向かった。
行く場所は……あの人と同じ電車で一本。
ふとそんなことを考えてしまう自分に、ため息が1つ。
いるわけない……だってもう時間は過ぎてる。
授業が終わって、そのまま駅に向かったくらいに会えるんだもん。だけど今日は掃除もしたし、一度家に帰った。もうすでに彼は家へと帰ってるはずだ。
もう諦めると決めたくせに、そんなことを考えてしまう自分。会えない方がいいんだ。忘れた方がいい。
そう思って電車に乗り込んだ。
チラリと辺りを見回すと
少し騒がしい同い年くらいの女の子達
ベビーカーの中の赤ちゃんに笑いかけるお母さん
荷物を沢山持ったおばあさん
とすぐにどんな人が乗っているか分かる程度。
……いけない。
私、また探してる。
ブンブンと首を振って、外を眺めたらもう夕日が沈もうとしていた。
一駅、二駅、そしていつも彼が降りる駅に着く。
もう見ないようにしようと思っていたら、先ほど大きな荷物を沢山持ったおばあちゃんがふらふらとよろめいているのが目に映った。
時計を見て、少しだけなら大丈夫かなと私もここで一旦降りる。
困ってる人は助けるって、家訓だもんね。
「おばあちゃん。お手伝いします」
「あら、まぁまぁ。ごめんなさいね…」
大きな荷物を受け取ると、意外と重い。だけどおばあちゃんは、もっと大変だとエレベーターの方へ進んだ。
「ごめんなさいね…孫にお土産を買い過ぎてしまって……上に上がったら娘が車で来てくれてるはずなの。」
「いいえ!大丈夫です!」
上までなら時間的にも次の電車に間に合うはず
ふらふらとまっすぐエレベーターに向かったら
「あ、危ないわ。お嬢ちゃん」
と声をかけてもらった。
え?と思った時には、ポイ捨てされていた何かを踏みつけてぐらりと視界が揺れる。
…荷物が!!
ギュッと庇うように荷物を抱きしめた。
おばあちゃんのお孫さんへのお土産……
………
………あれ?
グイッと何かに引っ張られた感覚が少しあったけれど
………やっぱり転んでない??
そう思って顔を上げた私は、ギョッとした。
「んとに危なっかしい女だな。何回転びかければ気がすむ」
嘘……
彼に……
会えちゃった……

