今日も1日の授業が終わり、掃除当番のため箒を掃除ロッカーに取りに行く。


亜紀ちゃんは何か用事があるみたいで先に帰った。


「1人で帰れる!?大丈夫!?」

なんて心配そうな顔してたけれど、亜紀ちゃんは私を子供扱いしすぎだよ……。


一生懸命床を掃いて、溜まったホコリを取り除く。みんな早く帰りたいのか、テキパキとしているけれどまだ目立つゴミがあるので、私は仕事が遅い分丁寧にやっていた。



「笹本さん?おわったー?ゴミ捨て行くよー」


「あ、ま、まだ。私やっとくから良かったら先に帰って大丈夫だよ!!」



ニコッと微笑むと、彼女を含めた私以外の掃除当番は、

助かるー!

なんていいながら箒を片付ける。


みんな忙しいのかな……部活もあるもんね。
せっかくだから綺麗な教室にしようと、1人でできるところまで掃除。


やれることの限界はあるけれど、せっせと隅々まで頑張って、終わった時には額に汗が流れてた。



「よしっ。後はゴミ捨て……」


ガラッと開いた教室のドア。


もう誰もいないと思っていたので、一瞬驚いたけどもちろんここのクラスの人物。しかしよりにもよって苦手な佐山くんだ。


「笹本……まだ残ってたわけ?っていうかどんだけ丁寧に掃除すんの」


「あ、いや……要領が悪いから遅いだけです…」


思わず敬語になってしまった。
ジャージを着てるから、部活中じゃないのかな……何しに来たんだろう……。
うう……やっぱり少し佐山くんは怖い。
また何か言われるかも……


「……何か手伝おうか?」


だけどどうしたことだ。
彼の口から出た言葉は、私をからかうものではなかった。


「え、あ、後ゴミ捨てだけで…」


「あ、そう。なら行ってやるからゴミ箱かして」


ツカツカと歩いてきて、私が持ち上げようとしていたゴミ箱を奪い取る。

……佐山くんが優しい……


「なにかいいことでもあったの?」


「は?なんで?」


「だって……優しい……から」


私の言葉に、彼はカァアアと顔を赤くした。


「か、勘違いすんなよっ!お前がチビでトロいから、手伝ってやるだけで」



「……ご、ごめんなさい。」


あまりにも大きな声で叫んだからつい謝ってしまう。せっかく優しいなって褒めたのに……何か気に障っただろうか。


「あ、いや…そんな泣きそうな顔すんなよ……えっと俺はただ……」


もごもごと何か言いたげな彼に、私は首をかしげる。


「……あーもう!とにかく捨ててやるから!!任せとけ!!」


だけど結局話を遮り、佐山くんはわしゃわしゃと自分の髪をかいていた。


「あ、ありがとう……また今度お礼するよ…」


気に障らないようにと、言葉を選んだつもり……すると佐山くんは少し考えた後、真面目な顔で私をじっと見つめる。


「お礼なんていい。だから、ちょっと聞いていいか?」