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「はぁ……。」
朝から学校で大きくため息を吐くと、心配そうに亜紀ちゃんが頭を撫でてくる。
「真子……大丈夫?」
「んー…なんかね、やっぱり諦めなきゃなぁって考えてたの。」
頭ではもうとっくに諦めたつもりなのに。
心がそれについていってくれない。
一度しか話したことない相手なのに、何故ここまでのめり込んでいるのか。
「あのね、真子。真子に極妻は似合わないから!!諦めるのに大賛成!!」
「んー…そうだね…」
それでもまだ彼を思うとドキドキして、心臓が切ない音を立てる。バカみたいだけど、止められない。
「なんなら新しい恋をするのがオススメよ。」
「新しい恋?」
「そう。私がいい奴紹介してあげるから、ね?」
新しい恋なんてそう簡単にできるのかと考えていたら、彼女は大きな声で叫んだ
「佐山!佐山隼人!!」
その名前に、え!? と思わず目を見開く。
ど、どうして佐山くん?と混乱しだしたと同時に、バスケ部の友達と話していた彼は不機嫌そうにこちらを向いた。
「なんだよ。」
「佐山〜。真子が失恋して落ち込んでるの〜たまには、いじめないで慰めて〜」
「「失恋!!?」」
ガタッと思わず机を揺らす。
そして同じように佐山くんも驚いていた。
「……あ、亜紀ちゃ…」
「なに?笹本って好きな奴いたの?」
「え、あ、その……」
ただでさえ苦手な相手なのに。
恋バナなんてもってのほかだ。
なんて言ったらいいのか全くわからない。
「佐山…顔怖いよ?ヤキモチですかな?」
ニヤニヤしている亜紀ちゃんに、佐山くんはカァっと顔を赤くすると
「んなわけねぇだろ!!ふざけんな!」
と怒り出す。
「まぁでも、真子のタイプはいざとなった時助けてくれて、優しい人だもんね。佐山じゃ無理か……」
ペラペラと話す彼女に私はオロオロ、オロオロ。
「べ、別に笹本の好みなんてこれっぽっちも興味ないけどなー」
佐山くんはそう言うとプイッと顔を背けて戻っていった。
「亜紀ちゃん…なんで佐山くん」
「いやぁ……動揺してる。あいつ可愛いところあるじゃない。」
何に対する動揺だろうと、考えたけどわからない。チラッと彼のことを見ると、ばっちり目が合ってしまい、相手の方がすぐに逸らす。
………いま睨まれてたのかな……
だとしたら怖い……