2日後、蓮巳くんと約束をしていたことを思い出した。
待ち合わせ場所の神社の鳥居に座って俯いていると。
「珠紀」
蓮巳くんの声が聞こえて振り返ると、マフラーを首元に巻いた彼が歩いてきていた。
「ごめん、待った?」
「あ、ううん…」
嬉しいはずなのに。
なんでかな、顔が見れない。
「……珠紀?」
私の様子に気がついたのか、彼は顔をのぞき込んできた。
「あ、うん!じゃあ行こ!今日はどこいこっか…」
お願い。
気づかないでいて。
「………まぁ、いいや。あ、そうだこれ、珠紀に」
そういって彼が差し出したのは、子狐のぬいぐるみだった。
「可愛い……」
「この前、帰り道で見つけて、なんか珠紀に似てると思ったから」
狐に似てるのは、まぁ合ってるな。
だって狐だし。
……………ん?ちょっとまって…。
「どこが…?」
私、狐っぽい行動してた…?
密かにドキドキしている私の心境など知りもしない彼は。
少しだけ目を細めて。
「アホっぽいところ?」
「…は?」
アホっぽい、と言われてぬいぐるみを見つめる。
確かに、なんというか……マヌケヅラ?
えー、私…こんな顔してるの………。
「って、酷くない!?」
はっと気がついて彼を見ると、蓮巳くんは爆笑しながら私の頭を撫でた。
………絶対、遊んでる。
「うそうそ。…いや、それもあるけど。可愛いじゃん?それ」
可愛い、と言われて拗ねていた心がふわりと軽くなる。
……あーもう。
単純だなぁ、私。
ぬいぐるみを抱きしめると、ほのかに蓮巳くんの匂いがして、少しだけ頬が熱くなった。