待ち合わせは午後3時、そして、さよならは午後6時。
3時間の短い逢瀬が終わり、またねと約束をして、彼と別れたら。
私は ’’私’’ ではなくなる。
風が音を立てて過ぎ去る。
彼との待ち合わせ場所だった鳥居を潜り、境内の中へ。
そして奥へと進み、一番奥の襖を開ける。
そこに広がるのは、人の世にあらず。
見回せば、一つ目が走りすぎ、その先では長い首がとぐろを巻く女が緑色の飴を売っていた。
人が世とは離れた、あやかし住まう、この場所は。
私が生まれ育った場所だった。
境内の床から足を1歩前に出す。
チリチリと、肌を焼くような感覚。
それを過ぎ去れば、私は。
金色の髪に狐の耳、つり上がった瞳に九本の尻尾をもつ、あやかしそのもの。
………ねぇ、蓮巳くん。
あなたはこの姿を見たら、きっと怖がるでしょう…?
彼のそばにいたいから。
絶対にバレてはいけない私の秘密。
今日も隠し通して。