背の高い彼は、私を見て微笑んだような気がした。
「さぁ、もうお帰り。お母さんが心配しているよ」
彼はそう言って足元の子供たちの背中を押す。
彼らは返事をして、路地に消えていった。
私が何度探しても見つからなかった、あの路地に。
………………………なんで。
探しても探しても見つからなかったあの路地が、ある。
覗き込めば、不思議な感じ。
この世とどこか隔離されたような風景が目の前にある。
寂しげに鳴く烏や、蛇が這ったような不思議な模様の猫。
今は見えないけれど、この奥には、赤い鳥居があるはずで。
無意識に、そっと足を踏み入れる。
と、肩を掴まれた。
半ば意識が虚ろなまま振り返ると、お面の彼が首をかしげていた。
「君は帰らなくていいのかい?もうじき日が暮れる」
それを聞いて、私は空を見上げる。
真っ赤な夕日が輝いていて、早く帰れと急き立てる。
けれど私は、どうしようもなくあそこに行ってみたくて。
今行かないと、またしばらくたどり着けないように感じて。
「………………また、お話聞かせてくれませんか?」
気づけば、そういっていた。
「………では、話しながら行こうか?」
そう言って、仮面の奥で彼が笑った気がした。