「おーにさーんこーちら、てーのなーるほーうへー!」
いつもの帰り道、子供たちの楽しそうな声が響く。
ただ不思議だったのは、その子達がみんな着物を着ていたことだ。
「今どき着物なんて着せる親いるんだね」
隣を歩く友人がその子達をみて呟く。
「うん…」
それに少し上の空で返す私。
頭の中で巡るのは、先日の神社とそこにいた不思議な男性。
あの日から、何度も探し続けている路地だけど、場所をはっきりと覚えていなかったから、まったく見つからない。
似たようなところはいくつか見つけたけれど。
不思議な模様の猫や寂しそうな烏なんていない。
ましてや赤い鳥居なんて。
「あ、じゃあ今日は私ここで」
「あ、うん」
ぼーっと考え事をしていると、バイトがある友人は角を曲がって言った。
パタパタと手を振って去っていく友人は、私が一心に考えていることを知らない。
だって、信じてもらえない気がして。
いつの間にか、知らず知らずに存在していた鳥居。
小さな境内があるそこには、不思議なお面の男性がいて。
不思議な話をしてくれた。
どこ、なんだろう。
あの場所へと続く路地。
…………………どこにあるのだろう。
「きゃはは!」
そのとき、ドン、と足に何かが衝突した。
慌てて下を見ると、着物の男の子。
目が合った。
そしてじっと私を見つめる顔に、紅い光が差し込む。
眩しさに目を細めると、男の子は私の後ろを見てかけていった。
「おやおや、こんなとこまで来てしまったのかい?」
どくんと心臓がはねる。
その声に、聞き覚えがあった。
1度聞いただけ、そんな曖昧な声。
だけど、彼の声には、なんとも言えない違いがあるのだ。
私はちゃんと機能しない足と首を動かして後ろを振り向いた。
そこには、仮面の彼。
あのときの、仮面の青年だ。