「珠緒…」
隣の彼が声を上げると、それが姉さんに届いたのだろうか。
彼女は顔を上げこちらを見て、驚いたような顔をした。
そして辛そうな顔をしたまま走っていってしまった。
「……珠緒…?!なぜ泣いて…」
彼は、追いかけようと1歩踏み出し、私を振り返った。
「あの……」
落ち着かないような彼を見て、私は。
「…姉さんは、まだあなたの事が好きですよ」
「えっ」
「小さいとき、約束したんですよね。一緒になろうって」
「……!」
姉さんは、幸せになるべきなの。
いつも私の味方でいてくれた。
私が彼と見合いすると決まった時も、私を責めなかった。
そして、ひとりでないていた。
もう、一人にしないで。
「追ってください。きっと待ってます」
「……、珠紀さん、すまない、ありがとう」
彼はそう言って顔をあげると、姉さんが去っていった方へ走っていった。