結局、蓮巳くんに会えぬまま、6日が過ぎた。
そして、今日は。
白蛇の彼との、お見合いの日だった。
私は、朝起きてからよくわからないまま着物に着替えさせられて。
薄化粧と髪結いなどのおめかしをした。
そして今、隣には父。
向かいには白い鱗の男性と、その父。
「いやぁ、このような場を設けていただきありがたい限りです」
彼の父が声を上げ、父がそれに応える。
「いえいえこちらこそ」
こういう状態になり、実に長い間、2人だけの会話が行われている。
当の本人2人は依然として無言のままだ。
私はずっと俯いているし、白蛇の彼は視線をさ迷わせている。
そんな2人にまずい、とでも思ったのだろうか。
「珠紀、お前は彼と庭でも散歩して来なさい」
「あぁ、それが良いですな。なにせ緊張しているのでしょう」
2人の父親は、息を合わせてそう提案した。
白蛇の彼は、小さく頷くと、立ち上がって私へと手を差し出した。
私も、その手をとって立ち上がる。
そして私たちは庭へと続く廊下に出た。
「……すみません」
歩き始めてすぐに、彼が私に謝罪した。
「…何がです?」
「父がはしゃいでいるようで。……貴女には、その…恋人がいらっしゃるようですのに」
どこで知ったのだろうか。
わからないけど。
「…それは、貴方も同じでしょう?」
「……珠緒のことですか」
珠緒…姉さんとのこと。
彼はまだ、姉を好きなのだろうか。
「もう無理ですよ、おそらく」
「何故です?」
苦笑する彼は、どこか遠くを見つめていた。
「珠緒は、私のことなど好いてはおらぬでしょう」
彼は話しながら、足を止めた。
「…私がどれだけ恋焦がれても、彼女は私の申し出を了承してくださりはしなかった」
「……え?」
「…今回の件、私が貴女がた姉妹と婚姻を結ぶことになり、正直嬉しかったのですよ」
彼は目をつむり、微笑んだ。
「私は父に珠緒と婚姻を結ばせてくれと頼みました。結局、相手方が了承してくだされば良しとなり……私は、振られたのです」
………そんなわけない。
だって、姉さんは。
きっと、父さんだ。
父さんが、姉さんに話をする前に勝手に…。
「あの…」
私がそれを伝えようと口を開くと。
「っ、」
彼は目を見開いた。
彼が見つめる方向を見ると。
「姉さん…」
姉さんが、庭で静かに泣いていた。
1枚の紙を持って。
あれは……。