とりあえずミーコちゃんを探すべく、スマホで連絡を入れておいた。つまりいまは当ても無く歩いている状態だ。
「…朱里」
「……」
「おい!!」
ビクッと肩を揺らしたのは、要くんが大きな声を出したから。
「び、びっくりした。なに?」
「お前さ……それでいいわけ?」
突然の主語がない質問に、え?と首をかしげる。
「なにが?」
「なにがって…翔平先輩のことだけど。」
「……石川くんがなに?」
「…いや…お前、まじでわからないの?」
あきらかにイライラしている要くんに、私は眉をしかめた。
わからないの?
って言われても、何に対して言ってるのか。まず根本的なことから理解してない。
「翔平先輩も大変だな……」
おまけにポツリと呟かれた台詞。
きっとあれだ……私が、石川くんに頼りすぎてるから大変なんだ。早く愛さんとやらを探さないと。
いつの間にやらミーコちゃんから返事が来て、会って話したいからと、会う場所を指定した。
ベンチにおとなしく要くんと腰を下ろす。
ミーコちゃんが知ってさえいれば、あとは簡単だ。もし、知らなかった時のことを考えないといけないよね。
そのときは…やっぱり石川くん本人に……
そんな風に頭を悩ましていると、珍しく男子生徒がザワザワしているのが見えた。
一体どうしたんだろう……
女子なら
ああ石川くんがあそこにいるんだな。
って思ったけど、今回は男の人たち。
何があるのか検討もつかない。
「すげぇ美人……」
「モデルか女優??」
ポーッとしている彼等の会話に、なんと無く予想がついた。
「ねぇ、要くん。」
「なんだよ。」
「この学校に石川くんレベルに美人な人っていたっけ??」
「いるわけないだろ。ギャーギャーうるさいブスだらけだ」
相変わらずひどい天使に思わず苦笑い。いや、でもそれなら一体誰なんだろう。
「……朱里ちゃん!お待たせしました!」
その女性を拝む暇も無く、ミーコちゃんが少し息切れしながらやってくる。
「あ、ご、ごめんね。ミーコちゃん」
「いえ…で、でも私、昨日から友達がこっちに帰ってきてて少ししかお話しできないかもです。迎えに来るから…」
「そ、そうか……なら用件だけ。」
何から聞こうと考えていると、肘でトンッと要くんに背中を小突かれた。
「な、なに?」
「すごい美人が歩いてくる。」
「え?」
さっきまで男の子たちの話の的にいた人物だろう……しかもよく見ると、昨日バイト帰りに店の前にいた女の人に似てるような……
コツコツとヒールの音をさせながら、みんなの視線を欲しいままにする黒髪の女性。風になびく髪がまるで芸術だ。
「…こっちきてる……」
「え、う、嘘だ」
しかもなぜかここに真っ直ぐ歩いてきた。
一体なんなんだろう……もしかしたら、天使の可愛さに引き寄せられた女神??
いや女神よりオーラがすごい気がする。
「…あ、」
目の前で立ち止まったと思った刹那
「ミーコ。待ちくたびれちゃった。終わったの?」
彼女はミーコちゃんを見据えながら、静かにそう呟く。
ミーコちゃんの……友達?
「あ、ご、ごめんね。めーちゃん」
「ううん。いいの。ここには私を引っ掛けようとする男がいないのね。みんなヘタレばっかり。罵倒してやりたかったのに」
「…ま、またまたぁ…」
めーちゃん……
めーちゃん……?
「愛……ちゃん?」
もしや、とおもってポツリと呟くと、彼女はなんの迷いも無くこちらを振り向いた。
「……え、誰?どうして私の名前知ってるの?」
まさかの当たり……
そして…まさかの大美人!!!!

