いまだに怒りはおさまらない。

あああああ!もうっ!
彼氏がいてなんて考えられない!
みんな大ちゃんと同じじゃん!


O(女)DA(大ちゃん)と呼んでやる!大ちゃん相乗効果で更にイライラしてきた!!ってか人数多いだろうからみんな合わせてODA48だっ!!


「別れてからくるのが当たり前だよねっ!!みんな彼氏と石川師匠に謝ってほしいよ!!!いや!謝れっ!!」


その場に彼女達は居ないのに、ついつい熱くなって石川くんに叫んでしまった。


そんな私を真っ直ぐと見据えた彼は

「朱里ってやっぱり変だね」

なんて言葉を静かに呟く


「え、へ、変かな?おかしい?私がおかしいの?」

「いや…そういうことじゃなくて、おかしなことばっかり言うのにすごく純粋なんだなって思って。」


あまりにも


あまりにも石川くんが嬉しそうに笑ったから、私は息を呑んでしまった


こんなに……優しい顔するんだ


「ん?何してるの?」

「美しすぎて言葉に表せませんのでとりあえず十字をきってます。」

「拝み方変えればいいってもんじゃないからね」


神とは何回も何回も拝まれる運命なのだ。だってこんなのあまりにも神々しい。


「ほら…やめる」


そんな風に声を出した石川くんに手を掴まれて、私はあーあと肩を落とした


しかしODA48よ……
とても腹は立つし、失礼すぎるけれど気持ちはわからないこともない。


だって……このスラッと長い指

傷ひとつない美しい手

こんなゴッドハンドに触れられたら理性なんかさよならですよね。

「罪な手……」


「いきなり人の手を見つめてどうかしたの?」
「え、い、いや!なんでも!!とりあえずそんな失礼な人にも接している石川くんをリスペクトしまくるYO」

「…っ…バカなこと言ってないでほら行こう」


笑いをこらえた彼はスタスタと歩き出してしまった。


私は慌ててそれについていく。足の長さは違うけど石川くんが速度を緩めてくれるのでなんとか隣に並べていた。


まさに美の神とセクシーの神に愛されてるのね石川くん。私はセクシーのせの字もないし、おまけにこんな身体だし地獄に落とされてる。


「みて……あの人」

「かっこいー」


ふとそんな声を拾い上げて周りを見ると、ほとんどの女の子達が神をキラキラした瞳で見つめていた


ああ……そうか……
バカな私。バカな弟子。
こんなイケメンの横に並ぶなんておこがましいにもほどがある!


そう思い三歩ほど下がって後ろを歩く。

だけどそれに気が付いた石川くんは不思議そうな表情で立ち止まり、私を見た



「どうして下がるの?」

「だっておこがましくて」

「え?」

「石川くんみたいに素晴らしい人が、凡人代表である私と話してくれた挙句、不感症を治してくれるということだけでも奇跡なのに。更に横に並んで歩かせていただくなんて……バチが当たるよ。神の隣に歩く人類なんていないよ!」



長々と自分の理論を語ると彼はクスッと笑った後


私の手をグイッと引っ張った


「俺は神でもないしすごくもないよ。」

「えーすごいよ!!!石川くんはツチノコくらいすごい!」

「……予想外なところと比べてくれてありがとう。だけどただの大学生だよ。ほら、バカなこと言ってないで隣においで。」


なんてお優しい……慈悲深すぎる……


拝んでしまいそうな手を引っ込めた私。

ここまで言ってもらって、後ろにいるのは逆に失礼だよね。石川くんを冒涜してるのと同じだし、隣を歩かせていただくことにしよう。


「石川くん」

「ん?」

「こんな私の無茶を聞いてくれてありがとう」


満面の笑みでお礼をいれば、また優しい顔で笑ってくれる


「……引き受けたからにはちゃんと解決策を考えるから安心してね。」



そんな言葉をおまけでつけて。


ラーメン屋でつくチャーシューのおまけの何倍も、素敵です。師匠。