石川くんに面倒を見てもらいながら、何駅か電車に乗りたどり着いたのは若者で賑わう街。
ここは大ちゃんとよくデートで来た。
ショッピング、カラオケ、ボーリング、ゲームセンター、映画、あとご飯もよく食べたっけ。
遊びに行くと言えば大抵ここだったな。それだけですごく楽しくて幸せだったよ。
まぁ今は……その思い出すら消したい過去なのだけど。
そんなことを思い石川くんを見てふと思った疑問。
「ねぇ……石川くん」
「ん?」
「石川くんはこういうところに女の子とよく来るの?」
ただ単純にどんなデートをするのか気になっただけ。
神だもん!そりゃ私達とは一味違うに決まってる!!
だけど返ってきた言葉は予想もしてないものだった。
「え?こんなところに?なんで?」
え……
何でって……むしろなんで?
あ、そっか。
石川くんレベルになると、こんなところには来ないのかな!?
高級レストランに高級ボーリング
ピンが純金で出来てるとかそんなところがあるのかも!!
「デートの定番場所をデートに使わないなんて!さすがです!」
妄想に気持ちを昂らせてそう褒めたのに、彼は不思議そうな顔をすると
「デートなんてしたことないよ」
とけろっと呟いた。
え……
「え、え、え、いまなんとおっしゃられた!?」
「女の子とデートなんてしたことないよ。」
二回聞いても同じだ…
え……待って。デートしたことないって数々の女の子とお付き合いしてきたのに、そんなこと有り得るの?
固まっていろいろ考える私に石川くんは続ける
「デートと呼ぶのか知らないけれど行くならホテルでしょ??」
「ぶっ!!」
「することなんて一つだしね。」
爽やかな笑顔を見せてくれた彼に、私はこの人はやはり神だと納得した
デートせずして女を満足させるなんて……最強ですな。
だけど……石川くんは好きな人とかいなかったのかな……普通の恋愛とかそういうのを求めることはないの?
そんな疑問が頭の中に浮かんだので
「ふとした瞬間、デートしたいなぁとか思わない?」
と聞いてみた。
だけどその問いに怪訝そうな顔が返ってる
歪んだ顔でも整ってるとかどんだけ……なんて思ったけどそれは口には出さなかった。
「女の子とデートなんて考えられないよ……」
「どうして?」
「面倒くさいしね。そもそもそんな普通の恋愛を求める子は俺のところに来ないよ。面倒くさい子や嫉妬深い子は、近寄ってこないから。まぁ物分りがよくて、そういう関係でいいと思ってる子だけしか相手にしないことにしてるしね」
「な、なるほど!!そうなんだ!!」
「だいたい俺に相手して欲しいなんてお願いしてくる子は、7、8割彼氏がいるよ。それも表向きは仲が円満のカップルの子が多い」
衝撃の事実に今度は私の顔が歪んでしまった。
なにそれ……彼氏がいるのに石川くんのところにくるの?
しかもうまくいってるのに!?
「女の子なんてみんな同じだよ……」
ポツリと師匠が何か呟いたけど私は怒りでそれどころじゃない。
「失礼だよ!!!」
自然に出た叫びに石川くんが眉をひそめた
「君もこういう考えが嫌いなタイプ?女の子に失礼って言われたことは何度もあるけ」
「違う!私は石川くんに失礼だって怒ってるの!!!!」
そうだよ。師匠はなにも悪くない。
私の怒りの矛先は、彼氏持ちの女の子たちだ。
「……俺に?」
「そうだよ!石川くんのことも彼氏のこともなんだと思ってるんだか!どうしても師匠が必要、師匠が好きで仕方ないならまだしもっ!!!彼氏に内緒で石川君に相手してもらうなんて失礼な話だよね!私の神を冒涜してるよ!弟子の私が一人ずつ成敗してやる!!!」
言い切った後
ハァハァと息を漏らしたのはほぼ息継ぎがなかったから。
そんな私の姿を見て石川くんは固まっていた。

