しばらく2人で歩いていたのだけれど……


「ほら。前見て。危ないよ。」

「あ、は、はい」

「いちいちメモ取ると転びそうになるからやめようね」

「はい!ごめんなさい!」

「そこ電柱!!」

「はい!」

石川くんの面倒見が良すぎてびっくりしている。

おまけに車道側歩いてくれてるし、イケメンスキルが高すぎて目が離せない。


「見つめてくれるのは嬉しいけど、怪我すると困るからちゃんと前見ようね」

「イエッサー!!」


子供に言い聞かせるような優しい声で注意されてしまった。

違うのよ。石川くん。
私が悪いわけじゃないの。ついつい見てしまうその輝かしい貴方が罪なのよ!!

なんて言い訳しちゃうよ私。

だってさっきから色んな人がこっちを見ていたもん。そう思ってるのは私だけじゃない。


さすがです。師匠


弟子として彼の人気は私の喜びである。しっかりガッツポーズしておいた。

「…………」


するとそんな私の方を石川くんは、じっくり見つめ始める

「どうしたの?」

「んー……まず、服が欲しいんだけど、いつも予算はいくらくらいかな?」

「え、あ、オシャレに疎いので服には一万円もかからないよ!」

「……そっか了解。」


私のために何か考えてくれている彼に、激しく感動してしまった。

きっといま私に似合うコスプレを模索してるんだ!

メイド?それとも看護師さん?

きゃー!!どれも私には初体験ですっ!!


「ほら、なにしてるの。行くよ」
「はい!!」


自分の世界から引き戻されて彼の後ろをついていく


「私には何が似合うかな!?ミニスカポリスなんかどうでしょう!?ハート泥棒の石川くん!貴方を逮捕しますっ!なんつって!」

「……まって……朱里は何を買うつもりなの?」


プッと吹き出されたので、思わずぽかんと口を開ける。

「コスプレ衣装じゃないの?」

なんて聞いたら笑われてしまった



「っ違うよ……今とイメージが反対の服を買うんだよ……っ」

「えええ!!そうなんですか!?」

「いきなりそんなことしないよっ。」


予想と違いすぎた……
なら普通の服を買うのか。なんだ



「まぁでもいきなりコスプレなんて……狩りの仕方も知らないのに大型モンスターを狩りに行くのと同じというわけだね!!」

「……ちょっとその例えは俺にはわからないかな。」

われながら流行りに乗ってうまく例えられたと思ったのに伝わらなかった。ま、いっか。


「えっと基礎から教えるから応用はまだまだってこと?」

「うん。まぁそうだね」

石川くんの笑顔に私も二ヘラと笑顔で返す

すると、たちまち彼の顔が不思議そうな表情に変わりそのままみつめられてしまった。


「こんなに人懐っこいし従順なのに……甘いムードに流されるのがダメなんて誰も信じられないね。」


……そこなんですよね。


「……そう、私も不思議。この人といちゃいちゃしたいって気持ちはあるのに、いざそうなるとダメなんだもん。」

「まぁ仕方ないよ。初めての相手は選ばないとね」


彼の言葉に私は目を見開く。


石川くん……やっぱり人間じゃないでしょっ!!?全部見透かしてくるもん!


何も言っていないのにバレすぎてる事態にそんなことを思った。


初めて会った時からそうだけど、なんでもお見通しだなんて……

そんなの…そんなの…


「かっこいいよ!師匠!」

素敵すぎるっ!!!

「……え……何がかわからないけどありがとう」

なんて最高なんだ。これからも私のことをどんどん見透かしてほしい!


「えへへ。師匠ー」

「今更だけどその呼び方を自然に受け入れてしまってる自分が怖いよ。やめない?」

「いやですー!し・し・ょ・う」

「………まぁいっか。なんか犬みたいで可愛いし」


弟子じゃなくて犬なんだ!!!
けどお許しが出たから嬉しい!


「ほらいくよ。」

「わん!」

「……吠えた…」


うん……もっと犬の吠え方極めとこう。