…それから週末まで、私は、仕事に没頭した。たけちゃんのことも、あの男の事も、考えないようにして。

そして迎えた週末。私は一人で、本屋に来ていた。

好きな作家の本を数冊持ちながら、店内をうろうろ。

本当に本が好きだ。この本の匂いも、好きだ。

…。

私は一冊の雑誌の前で、足を止めた。

『ヘアサロン特集miu 代表取締役三浦彰人』


それは、ヘアサロン関係の雑誌だった。

あの男が表紙でポージングした、写真。

いかにも絵になるそれを、私は取り上げまじまじと見つめる。

「…ただのナンパ男じゃなかったんだ」

思わず本音がポツリ。

…。

私はなぜか、その雑誌も一緒に購入してしまった。

本屋から程近くの喫茶店に入った私は、本を読みふけった。

…気がつけば薄暗くなっていて、どんだけ本好きだよ!と、心の中で突っ込みをいれた。


店を出て、ブラブラと街中を歩いていると、一見の店を発見。

…雑誌に出ていたmiu だ。

少し離れたところから中をうかがってみる。

…あの男はいないようだ。

私はホッと溜め息をつき、家路につこうと体を反転させた。

「…ぁ」

私は顔をひきつらせた。

何てことだ。

「ヘアサロン来てくれたんだ。嬉しいな」

そう言ってるのに、何だかその笑顔は、冷たく感じた。

「べ、別に来た訳じゃ!って、ちょっと」

…私の言葉など完全無視で、手を引っ張られ店内へ。