マーシャの鳴き声でデービッドはハッと我に返るが、本の上に乗っている自分の愛猫を見てまた悪夢に戻された。

「あ~、これで僕の夕飯と明日の朝御飯は幻になってしまった」

青ざめた顔でデービッドは呟く。

その呟きは棒読みだった。

ニャ~。

マーシャはデービッドの注意を引くためにもう一度鳴くと、本をトントンと叩いた。

「え?」

デービッドはマーシャの目をまじまじと見つめる。

「お前……もしかして僕にその本を読めって言ってるの?」

マーシャはデービッドの質問に静かに頷くと、本から離れてデービッドに読むよう促した。

「……SNOW.作者はジェミラス=メリンジャール。え?これってうちの始祖さまの名前じゃないか。自伝なのかな?」

本を手に取ると、デービッドは好奇心がわいてきて『SNOW』を読み始める。

その側でマーシャは悲しそうな顔をして、デービッドの声を聞いていた。