五年前の彼なら、剣を抜いてアークに襲いかかっただろう。

人は変わるものだ。

「皆テントに戻れ!明日の朝にはニザームを発つ」

アークの号令数万の兵が騎乗する。

「ジェミラス、お前が兵を率いよ」

アークはジェミラスの肩をポンと叩いた。

「アーク様は?」

「私のことなら心配ない。この辺を一回りしたら皆に追い付く」

「承知致しました」

ジェミラスが返事をすると、アークは黒馬にまたがり駆けていった。

ニザームの都の建物は今はもうほとんどが焼き尽くされていて、以前の美しさは幻となってしまった。

あれだけ勢いよかった炎は消え、焼け跡だけが残っている。

辺りは暗く、美しい月明かりだけが下界を照らしていた。