「……お前……俺を馬鹿にしているのか!」

少年の手が怒りでブルブルと震える。

いつもの高笑いの時の目でアークが自分を見ていたのなら、少年は戸惑うことなくアークを刺していただろう。

だが、今のような穏やかな目をしたアークに襲い掛かることは少年には出来なかった。

「クソッ!……何故なんだ……」

少年はギュッと唇を噛み締める。

少年は不甲斐ない自分が情けなくて仕方がなかった。彼にとってはアークの言うように、絶好の機会だったのだ。

ただ無力さが少年を襲う。

「俺は……馬鹿だ」

自嘲するように呟くと、少年はアークに向けていた剣を突然自分に向けた。

「お前……」

少年の行動にアークは微かに目を見開き、少年が自害する前に彼の手首を掴んで剣を奪うと、彼の頬を思い切り平手打ちした。