駅から歩いて帰ってくると、燿の家より手前にあるあたしの家に先にたどり着く。


「また明日」

家の前に着くと、にこりと笑った燿にぽんっと頭を撫でられた。

そのことをくすぐったく思いながら上目遣いに燿を見たら、唇にキスが落ちてきた。

そう、キス……

鏡に映る自分の唇を見つめて指で触れる。

はっと見ると、鏡に映る自分の顔が赤かった。


「柑ちゃん。昨日、燿となんかあった?」

ただでさえそんな状態なのに、梨里がにたりと笑って鏡越しに訊ねてくるから、激しく動揺してしまう。


「な、なんかって何?」

「柑ちゃん、声裏返ってる」

梨里があたしを指差して、クスクスと笑う。


「昨日、柑ちゃんと燿、黙って先に帰っちゃったでしょ?何かあったかなーって気になってたんだけど、あたしが帰ってきたときにはもう、柑ちゃん部屋にこもって寝ちゃってたみたいだから」