「かーんーちゃんっ」
朝、洗面所の鏡の前にぼーっと立っていると、すでに制服に着替えて身なりをバッチリ整えた梨里が、洗面所のドアの陰からひょこっと顔を覗かせた。
鏡に映る寝ぼけ眼のあたしに向かってにこっと笑いかけてくる梨里は、我が妹ながら朝から可愛い。
「あぁ、おはよう……」
鏡に映る梨里に向かって挨拶しながら、大きな欠伸をひとつする。
「柑ちゃん、寝不足?」
小首を傾げながら訊ねてくる梨里は、月曜日の朝から爽やかだ。
「別に。そういうわけじゃないけど……」
寝癖で外側に跳ねた毛先を手のひらで撫でつけたあたしの脳裏にふと思い浮かんだのは、燿の顔だった。
寝不足といえば、寝不足なのかな。
昨日は帰ってきてからずっと燿のことを考えてしまって、なかなか寝付けなかったから。
鏡に映る自分を見つめて、ぼんやりとする。
梨里と響を置いて先に遊園地を出たあたし達だったけど。
そのあとどこにも行かず、電車に乗って真っ直ぐに家に戻ってきた。