「柑奈は全然わかってないみたいだけど、俺言ったよね?響なんかやめて、俺にしとけば、って。嘘なんかじゃなくて、本気だから」
燿が真剣な目であたしをじっと見下ろす。
目をそらすこともできずにゴクリと息を飲み込むと、燿が口端を引き上げて綺麗に微笑んだ。
「ここに来てからずっと柑奈のこと響に独占されてて、かなりムカついてんだよね。そのうえ、嘘つき呼ばわりされて余計に」
綺麗に微笑んでいるはずなのに、低く響いた燿の声は、明らかに怒りを含んでいた。
あたしを見下ろす燿の目が座ってる。
「よ、う……?」
苦笑いしながら呼びかけたら、膝の裏に片腕を回した燿に軽々と抱き上げられた。
「ちょっと、燿!降ろしてっ!」
公衆の面前でいきなりお姫様抱っこされて、頭がパニックになる。
足をジタバタさせて叫んだけど、燿はただ悪戯っぽく笑うだけだった。
「なんかもう、ここにいてもつまんないし。このまま攫ってっていい?」
「いや、ちょっと待って。意味わからない。恥ずかしいから降ろして!」
笑いながらわけのわからないことを口走る燿の肩を強い力で殴る。



