「さっきからごちゃごちゃ。わけわかんないことばっか言ってんじゃねぇよ」
燿が、ものすごくトーンの低い声で唸る。
今日一番に怒っている声にビビって逃げ出そうと足掻くと、それに負けない強い力で抱きしめられた。
「痛い……」
「痛くしてんの。柑奈がバカだから」
「ちょっと!バカって何――……」
「だって、普通に心配するだろ……」
あたしを拘束する腕をポカリと叩いたら、燿が急に弱々しい声でつぶやいた。
「心配って?」
「柑奈のこと振ったくせに、響がわけわかんない理由でふたりきりになるようなシチュエーション作って思わせぶりな態度とるから。柑奈、まだ響のこと好きだろ。なのに、そんな中途半端なことされたら傷付くじゃん。だから、柑奈が全然戻ってこなくなって、すごい心配した」
「そう、なの……?」
「そうだよ」
あたしの声に、ふて腐れたような燿の声が重なる。



