長い長い片想いだったのに、その失恋の傷が今は思ってたほど深くない気がするのは、たぶん燿のせいだ。
「梨里のために響を諦めさせたかったんなら、もっとマシな嘘ついてよ。燿のバカ。大キライ」
燿の手を乱暴に振り払ったら、がっちりとつかまれていたはずなのに、あっさり外れた。
燿の手から解放された瞬間、コントロールが効かなくなった涙がつーっと頬を零れ落ちる。
何だ、これ。何泣いてんの、あたし。
響に振られた瞬間だって、響と梨里が付き合ってるって知ったときだって、こんなふうに簡単に涙を流したりしなかったのに。
慌てて涙をぬぐったら、燿が歩み寄ってきてあたしとの距離を縮めた。
「何？」
眉間に力を入れて睨みあげると、なぜか燿があたし以上に泣きそうな顔をしていた。
「燿？」
名前を呼ぶのと同時に燿の手があたしの後頭部を抑えて引き寄せる。
気付いたときには、燿の胸に顔を押し付けられるようにして抱き寄せられていた。
