片方の唇をつりあげて意地悪く笑った燿の言葉が、グサリと胸に突き刺さる。
『柑奈なんか好きにならない』
その瞬間、響じゃなくて、優しい目で梨里を見つめていた燿の顔が脳裏にちらついた。
燿は「響は……」って言ったけど、それが燿自身の本音でもあるように聞こえてしまう。
「どうして、そんなこと言うの……?」
胸がぎゅっと苦しくなって、喉から絞り出した声が震えた。
わかってるよ。
響が、燿が、あたしなんか好きにならないことくらい。
幼なじみの三角形に、あたしが入る隙間なんてほんとはなかったことくらい。
だけどあたしが嘘吐いてるっていうなら、燿はもっと嘘つきだ。
「燿だって、嘘吐いたじゃん……」
「は?」
泣き出しそうになるのを堪えて睨むと、燿が不機嫌な声を出す。
「燿だって、あたしが好きだって嘘吐いた。本当は、梨里のこと好きなくせに」
「は?何言ってんの?」
不機嫌だった燿の声に、当惑の色が混じる。



