「もしかして、ずっとここにいた?ひとりで何してたの?」
「え、っと……喉渇いたからジュースを……」
つかまれている手を軽く揺すって持っている空き缶を見せると、燿の瞳が翳った。
「大丈夫?」
燿が、ひとりごとみたいにぼそりとつぶやく。
「え、何が?」
一瞬前まで怒りを露わにしていた燿が、急に心配そうな目で見てくるから戸惑う。
「柑奈って、気分が落ち込んだときはよく炭酸選ぶよね」
「そう?ただなんとなく、飲みたい気分になっただけなんだけど……」
燿に指摘されて、少し焦った。
無意識だったけど、気分が落ち込んでたことに間違いはなかったから。
炭酸飲料の空き缶を見つめて眉を寄せると、燿が表情を曇らせたまま苦く笑う。
「おばさんや梨里とケンカしてうちに逃げてきたときとか、喉渇いたーって言って、だいたい炭酸選んでるよ。昔聞いたら『なんか気分がスカッとするから』とか言ってた」
「そうだっけ?なんか、単純思考だね」
ははっと乾いた声をたてて笑うと、燿があたしの手から空き缶を取り上げて、ゴミ箱に向かって放り投げた。



