「どこまでトイレ行ってきたの?」
聞き慣れた声に訊ねられて顔をあげると、目の前に燿がいた。
「あ、えーっと……どうしたの?」
取り繕うように笑ってみせたら、燿がじろっと睨んできた。
「トイレ行ったきりなかなか帰ってこないから迎えにきた」
「あ、そうなんだ?」
「そうなんだ、じゃなくて。こっち、トイレじゃないよね?」
「そう、なんだ?」
とぼけて首を傾げたら、燿がさらに怖い目であたしを睨んできた。
「トイレの前まで行ってみたけど、全然出てくる気配ないし。大のほうにしても長すぎるから、こっちまで探しに来たんだけど」
「いやいや、いくら幼なじみだからって大のほうとかやめてよ」
怖い顔で人を責めるみたいな話し方をする燿に笑いながら突っ込む。
だけど、冷めた目で見おろされただけだった。
なんだか知らないけど、燿ってばすごい怒ってる……?
理解不能な燿の怒りに圧倒されて、一歩後ずさる。
そうしたら、空き缶を持っているほうの手を、燿にがっちりとつかまれた。



