オレンジ・ドロップ


「なんか美味そうなの食べてるな」

燿の不機嫌オーラに気付かないのか、響は笑いながら梨里のほうに歩み寄って行く。


「ひとくち食べる?」

梨里が響に向かって食べかけのジェラートを差し出す。

そんなふたりに、燿は冷たい視線を向けていた。

燿は、梨里のことは兄妹みたいな感じって言ってたけど……

さっき梨里とふたりでいたときに見せてた楽しそうな表情とか。

今、梨里を見ている怒っているみたいな眼差しとか。

そういうのを目の当たりにすると、やっぱり燿は梨里が好きなんじゃないかって思う。

響の横にも、燿の横にも、あたしの場所なんてないじゃない。


「燿、梨里のことありがとな。おかげで、こっちは遊園地満喫できた。な、柑奈」

「え、あ、うん。そうだね」

燿のことを眺めながらぼんやりしてたら、急に響が振り返って笑いかけてくるから焦った。


「すげー楽しかったよな。特に最初に乗った、宙返りするやつ」

「うん、そうだね」

響の話に合わせて、へらりと笑っておく。