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「やっぱり燿と並べばよかったって思ってる?」
燿の瞳を思い出しながら、ぼんやりと並んでいると響がにやりと笑いながら顔を覗き込んできた。
「何を突然……」
「あ、赤くなってる」
「なってない!少し暑いだけ」
「ふーん」
ちょうど燿のことを考えているときだったから、響の揶揄う声に過剰に反応してしまう。
「それより、響こそ梨里のこと放っといていいの?梨里と燿って中学生くらいのときにちょっと付き合ってたことあるんでしょ?」
にやにやと愉しそうな響をちょっとくらいは出し抜いてやりたくて、いつだったか燿から聞いた話題を持ちかけてみる。
だけど響はあたしの話なんかに少しも焦る様子はなく、むしろ涼しい顔をして立っていた。
「あぁ、そう言えばそうだっけ?でも俺、梨里のこと信用してるし」
余裕ぶった笑顔でそんなことを言ってくるから腹が立つ。
「でも、梨里は?一応あたし、響に告白したよ」
「うん、でも断っただろ。それに、俺も梨里の信用は得てるつもりだけど」
響が首を傾げながらにこっと笑う。
それがただののろけにしか聞こえなくて、余計にいらっとした。



