オレンジ・ドロップ



「心配なら、響が梨里と一緒にここにいろよ。どうして俺に任せて柑奈連れてくんだよ」

響を睨みながら、燿があたしの手をぎゅっと強くつかむ。

その力は痛いくらいに強かった。

燿につかまれているところが赤くなってきて、微妙にしかめっ面になってしまう。

それに気付いたらしい響が、あたしの手をつかんでいる燿の手に自分の手を重ねた。


「燿、柑奈痛いみたいだけど?」

「え?」

響に言われてようやくあたしの顔を見た燿が、慌てたように手を離す。

そのタイミングを図ったように、響が手をグイっと引っ張って燿からあたしを引き離した。


「じゃぁ、梨里のことよろしく。柑奈行こう」

響がそう言ってあたしににっこりと笑いかけてくる。

小さい頃よりも大人っぽくなった優しい笑顔に、もう諦めかけていた恋心がほんの少しだけ疼く。

頬が赤らんでしまったことが響にばれないように顔をそらすと、梨里の傍でこっちを見ている燿と目が合った。

何か言いたそうにあたしを真っ直ぐに見つめている燿の瞳。

それが気になって、ふと立ち止まりそうになる。


「柑奈、早く」

だけど響に声をかけられて、結局あたしは立ち止まることなく彼について行った。

響の隣を並んで歩きながらも、梨里と一緒に置いてきた燿の瞳が妙に気になった。