オレンジ・ドロップ



だから、我が家のお出かけプランにはあまり遊園地という選択肢はなくて。

中学時代、春休みや夏休みに友達とはよく遊びに行ったけど、家族では数えるほどしか行ったことがない。

それなのに、なぜ遊園地……?

怪しんでいると、梨里が恥ずかしそうににこっと笑った。


「遊園地デートとかしてみたかったんだけど、あたしが乗り物ダメだから響に悪くって。でも、柑ちゃんが一緒だったら響も乗り物乗れるから楽しめるでしょ?だから、今日だけふたりに付き合ってほしいなぁって」

梨里に可愛くお願いされて、あたしも燿もそれ以上行き先について反論できなくなってしまう。


「じゃぁ、出発」

黙り込んだあたしと燿を促すようにそう言って、響が梨里と並んで歩き出す。


「早く行くぞー」

燿とふたり、立ち止まっていると、響に声をかけられた。


「行く?」

訊ねられたから小さく頷くと、燿が面白くなさそうにあたしから顔をそらした。


「どうかした?」

「別に」

気になって燿の横顔をじっと見る。

だけど、少し怒ってるみたいな声でそう答えた燿は、あたしを置いて先に歩き出してしまった。


「あ、待って」

置いてきぼりをくらいそうになって慌てて追いかける。

そんな感じで、微妙なダブルデートは始まった。