オレンジ・ドロップ



彩音と奈津を振り払って、不貞腐れながら椅子に腰をおろす。


燿、燿って。

朝からみんな、何なんだ。

頬杖をついて彩音と奈津から視線をそらしていると、カバンの中でスマホが鳴った。

見てみると、燿からメッセージだった。

あまりのタイミングの良さに、焦って顔が熱くなる。

誰かに覗き見られるわけないのに、スマホを両手で隠すように握りしめてこそこそと燿からのメッセージを確認する。


『日曜日、響からダブルデート誘われた』

その文面を確認して、ばっと響を振り返る。

そうしたら、友達の輪の中でスマホを弄っていた響が図ったように顔をあげた。

あたしと目が合った響が、何か企んでいるような含み笑いを浮かべる。

その顔を見つめ返しながら、何だか嫌な予感がした。