やっぱり兄弟だもんね。

そうだとしても、燿なんかに響の姿を重ねてときめいてしまったことが悔しい。


「何でもないよ。じゃぁね」

燿を避けて歩きながら手を振る。


「あ、響の彼女の話してたんだ。いつから付き合ってるか響に聞いた?」

あたしの背中に向かって燿がわざとらしく話しかけてくるから、つい立ち止まってしまう。


「俺、知ってるよ。響の彼女」

燿がそんなふうに言葉を続けるから、耐えきれなくなって振り返った。


「響の彼女って誰?」

必死な声でそう訊ねると、燿が笑った。


「柑奈、泣きそう」

「そんなことないよ」

右の手のひらで目元を隠すように覆うと、燿がまた笑った。


「柑奈、自惚れてたんでしょ。響は柑奈のことが好きだって」

「な、何言ってんの?意味わかんない。あたしは響のことなんて……」

反論したけど、燿の言葉が全く的外れというわけでもないから口ごもってしまう。


「いや、絶対自惚れてたって。『響が好きなのは幼なじみのあたしでしょ?』って。違う?」

燿が意地悪くニヤリと笑う。