何にも気付いてないふりをして黙っていると、ようやく梨里が心を決めたように視線をあげた。
「柑ちゃん、あのね……あたし、今響と付き合ってる」
「へぇ、そうなんだ。全然気付かなかった」
動揺しすぎないように。驚きの声が自然に聞こえるように。
調整するのが難しくて、うまく反応できたかわからない。
だけど梨里は特に不審そうな表情を浮かべたりしなかったから、きっとそれなりにうまく反応できてたんだと思う。
「いつから?」
できるだけ白々しくならないように、自然に聞こえるように。
それを意識しながら、梨里に微笑みかける。
「高校入って少ししてから、かな。響に告白されて」
口元に幸せそうな笑みを浮かべたり梨里が、恥ずかしそうに目を伏せる。
長くて柔らかなウエーブがかかった茶色の髪から、ちょんと覗いている耳の先をほんのりと赤く染めた梨里の横顔は女の子らしくて可愛い。



