まさにその通りだよ!

そう言いたいのを喉の奥でぐっと堪える。

言いたいけど言えない。

だって、梨里は響と付き合ってる。

この前保健室で偶然盗み聞きしてしまった梨里と響のふたりの会話を思い出すと、どこからどう見ても相思相愛だったふたりの邪魔はできない。

響への気持ちを胸の奥に押し込んで黙っていると、梨里があたしの顔色を窺うように覗き見ながらちょっと気まずそうに眉尻をさげた。


「あのね、柑ちゃん。実はあたし、ずっと柑ちゃんに秘密にしてたことがあって……」

困ったような目をしてあたしを見る梨里の声が、だんだんと小さく細くなる。

今から梨里が何を言おうとしているのか、あまり考えなくてもすぐにわかった。

梨里が言おうとしているのは、たぶん響とのこと。

言いにくそうにしている梨里の代わりに、あたしが「響と付き合ってるんでしょ?」とか笑いながら軽く言ってあげれば、梨里はほっとするのかもしれない。

梨里のことは大好き。

でも、あたしは響が好きな気持ちを梨里に伝えないようにしようと必死に堪えてるんだから。

いくら可愛い妹に対しても、そこまで優しくなれない。

響と想いが通じ合わなかった。

まだ少し彼に未練を残しているあたしの、小さな抵抗。