「昨日はごめんね、柑ちゃん」
駅に向かって歩いていると、あたしのあとを追いかけてきた梨里に開口一番謝られた。
首を傾げていると、梨里があたしの顔色を窺いながら話しづらそうに口を開く。
「昨日、ノックもせずに柑ちゃんの部屋のドアを開けちゃったから……」
昨日の夕飯で顔を合わせたときも、そのあと一緒にテレビを見ていたときも、話そうと思えば話せる機会はあったのに梨里は全く何も言ってこないかった。
だから梨里は、あたしが燿に乗っかっていたことを気にしていないのかと思ってた。
ふざけてただけとか、そんなふうに思って流してくれたのかも。そう思って安心してたのに。
わざわざ朝の登校時間に追いかけてきて、謝られたら反応に困る。
「あー、あれはえーっと……」
「でも、びっくりしたよ。柑ちゃんはその、なんて言うか……燿じゃなくて、響のことが好きなのかなって気がしてたから……」