「手首痛いとか、絶対嘘だ」
涙目で睨むと、燿がクスッと笑う。
「嘘じゃないよ。だけど俺昨日言ったじゃん、本気出すって」
「本気って何よ。揶揄ってただけのくせに」
「そんなわけないじゃん」
そう言って、燿がぐっと顔を近づけてくる。
いろいろ不本意だけど、あたしを見下ろす燿の真っ直ぐな瞳につい視線が釘付けになってしまった。
「見下ろされるのもいいけど、やっぱりそうやって見上げられるほうが好きかも」
左手で身体を支えながら、燿が右手の親指であたしの唇をなぞる。
ダメだと言おうと思ったときにはもう遅くて、燿の唇はあたしのそこに触れていた。
軽いリップ音を鳴らして唇を離すと、燿があたしを見下ろしてニヤリと笑う。
「あれ?柑奈さっき学校で、燿なんかに二度とキスさせないって言ってなかったっけ?結構簡単にできちゃった」
燿の唇が離れてから、しまった!って思った。
燿の真っ直ぐなまなざしに捕らえられてしまって、避けれなかった。



