ふざけている燿を睨みつけたとき、自宅の門が開いて中からひとつ下の妹、梨里(りり)が出てきた。


「あれー?柑ちゃん、燿。そんなところで何してんの?」

ショートパンツにざっくりとしたニットを着た梨里が、笑いながらあたし達に手を振った。

背中まで伸ばしたショコラブラウンの髪がふわっと揺れる。

目鼻立ちがはっきりとしたあたしの妹は、遠目に見てもわかるくらい結構可愛い。


「あ、りぃだ。どっか行くの?」

あたしにはにやついたムカつく笑みを浮かべていた燿の目が、ふっと優しくなる。


「コンビニだよ。燿、今日帰り遅かったんだね。教室出たの、あたしより早くなかった?」

「うん、仁織(にしき)とかゆーりと遊んでた」

「そうなんだ。今度あたしも誘って。じゃぁね」

「いってらっしゃーい」

子どもの頃から変わらない、仲よさそうなふたりの会話を黙って見守る。


「で、俺、柑奈と何の話してたっけ?」

燿があたしを振り向いてにこりと笑う。

笑ったときの燿はちょっとだけ響に雰囲気が似てる。