オレンジ・ドロップ



「変な梨里」

梨里が去ったドアを振り返ってつぶやく。

それを聞いた燿が、今度は声をたててケラケラと笑い始めた。


「何笑ってんのよ」

怪訝に眉を寄せるあたしの下で、燿が身を捩りながらケラケラ笑い続ける。


「だって柑奈、おかしいんだもん。今俺に乗っかってる柑奈のこと見て、りぃ、絶対誤解したと思うよ」

「誤解って?」

「柑ちゃんが燿を襲ってる」

「は?」

「だから、りぃは『燿が柑ちゃんに迫られてる』って思ったと思うよ?」

「何で?どうしてそうなるのよ!」

「だって俺、今柑奈に床ドンされてるし」

燿が意地悪くニヤリと笑う。


「だってそれは、燿が急に引っ張るから」

「でも、梨里はそれ見てないでしょ?」

そう言われたらそうだ。

そういえば梨里は、あたしが響を好きなことに薄々気づいてたんだっけ?

それなのに部屋でふたりきりだからって弟の燿にまで迫って、節操ない女だって思われたかもしれない。