このまま思いっきり頭突きでもして逃げてやろうか。
そんなことを思いかけたとき、ドアの方からガチャリと音がした。
「柑ちゃん、燿が遊びに来てるんだってー?」
同時に梨里の声が聞こえてきて、あたしは床の上で燿に跨った体勢のままで振り返る。
不意打ちをくらったから、燿の上から降り損ねた。
ただそれだけのことなのに、あたしと目が合った瞬間、ドアから顔を覗かせた梨里の笑顔が凍りついた。
「あ、あ、えーっと……」
梨里が視線をうろうろと動かしながら、気まずそうにそっと一歩後ずさる。
だけど、ちょっとしたハプニングで燿の上に跨ってるだけのあたしには、梨里が動揺している理由がよくわからなかった。
「おかえり、梨里。おやつあるよ?」
そう言うと、下から燿が吹き出す声が聞こえた。
怪訝に思いながら燿に視線を動かすと後ろから梨里の声がした。
「ごめんね、柑ちゃん。空気読まずに急にドア開けたりして。じゃ、じゃあね!」
早口でそう言ったかと思うと、梨里がバタンと慌てたようにドアを閉める。
それからすぐに、廊下を駆けていくバタバタという足音が聞こえてきた。



