「ひゃっ……」
予想外の強い力で引っ張られて体勢を崩したあたしは、変な悲鳴をあげながら燿の上に倒れこんだ。
びっくりして咄嗟に燿の顔の両サイドに手をつく。
視線をあげると、お互いの鼻先がくっつくくらいの距離にいる燿と目が合った。
「柑奈、近い」
「だって、急に引っ張るから……」
距離の近さに戸惑ってるのはむしろこっちだ。
ちょっと怒った声を出すと、燿がほんの少し目を細めるようにしてクッと笑った。
その表情がなんだか可愛く見えて、不本意にも胸の奥がキュッと鳴る。
「床ドンって、予想以上にドキドキすんな。明日学校で自慢しよ」
だけど燿が完全に面白がってる燿の声を聞いて、また揶揄われたんだと悟った。
もう絶対燿のペースには乗せられないって誓ったばかりなのに。
「そんな自慢いらないから。せっかく人が心配してたっていうのに、手首痛いの嘘だったの?」



