オレンジ・ドロップ



「柑奈、それやめて。昨日捻ったところがまだ完全に治ってなくて、強く握られたら痛い」

燿が苦痛に耐えるように眉を寄せながら、左手で右の手首を庇うようにさする。


「え。ご、ごめん!」

そういえばそうだった。

右手首に何も巻いてないし、いつもどおり振る舞ってるから全然気付かなかった。


「普通にしてたら痛くなくなってたのに、今ので悪化したかも」

「ご、ごめんね」

「痛いー。柑奈のせいで完治遅れそう」

「え、そんなに?」

燿があまりに痛がるから焦る。


「ごめんね、燿。そんなつもりじゃなかったんだけど……」

そんなに強く握ったつもりもないんだけど……

ほんとに悪化してたらどうしよう。


「燿、ちょっと見せて。腫れたりしてる?冷やすものとか、湿布とか持ってこようか?」

できるだけ余計な刺激を与えないように、燿の右手首にそっと手を伸ばす。

燿が痛がっている場所に指先が触れたとき、突然左手で手をつかまれて引っ張られた。